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しがないリーマンの徒然HobbyLife!

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ムラサメ戦記第六話

ムラサメ戦記 第6話「誰(た)が瞳に希望は映る」(オーブ攻防戦編 最終回)

ショウ達が激戦を繰り広げていた数刻前、ソイル達別動隊は戦闘準備に入っていた。
もっとも、戦闘を避けるために大きく蛇行したことにより、目標地点到達まで幾分時間がかかったのだ。
「隊長達のことが気にかかるな。」
ジュウシロウがふと呟いた。
「確かに。でもリョウスケ君がいますし、大丈夫でしょう。」
「でも、わくわくしますね。この作戦。敵艦への強襲ってのは。」
キョウヘイは、早くミサイルの威力を試したいらしい。
「不謹慎だぞ、キョウヘイ。」
ジュウシロウが嗜めた。
「まあまあ、いいじゃねえか。ガチガチに緊張してると的も外れるしな。」
「まったく、お前というヤツは・・・・・・ 俺は隊長からお前のお目付け役を仰せつかっているのだぞ。そもそも軍人としてだな・・・・・・」
「はいはい、わかったよ。」
「貴様、人の話をなんだと・・・プッ」
ソイルは、うんざりした表情で回線を閉じた。

× × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

そして、飛行を続けた三機は敵戦艦のちょうど真上に差し掛かった。
「んじゃあ、行くぜ。さっさと片付けて飯にしようぜ。」
ソイルの言葉が合図となり、上空から一気に駆け下りる。機体を斜めに寝かせ、滑るように降下を続ける。
まず、ザフトのイージス艦一隻に狙いを付ける。
戦艦は、こちらの存在に気付くとすぐさまCIWSを起動し、対空防御体勢に入った。
海上から注ぐ機関砲の雨を掻い潜り、ムラサメが主翼部に装備した空対地ミサイルを発射する。
 勢い良く放たれたミサイルが白い噴煙を上げて敵艦甲板に突き刺さる。
「よし、ヒットぉ!」
グリップを引き上げ機体を急上昇させながら、ソイルが拳を掲げた。
 駄目押しとばかりに残り2人が垂直尾翼の高エネルギービーム砲で打ち抜いた。
戦艦は火柱を吹き上げると炎上した。
「よし、次だ。できるだけ落としておいた方がいい。」
「おいおい命令すんな。俺がリーダーだ。」
「ちょっと、2人ともこんな所で喧嘩しないでくださいよ。」
キョウヘイが間に割ってはいる。
「はははは。ちょっとした冗談だ。」
ソイルが高笑いした。
しかし、キョウヘイにはそうは見えなかったのだが。

すぐに、ターゲット後方の別艦に狙いを定める。しかし、その前に対空ミサイル数発が次々に発射された。弾頭はみるみるこちらに近づいてくる。
「やべえな、2人ともよけろよっ」
間一髪でソイル機は回避したが、追随する2機にミサイルが迫った。
「ちっ。」
ジュウシロウは機体を急上昇させると、バレルロールを行い回避する。
しかし、ミサイルは、キョウヘイ機へと誘導されてしまう。
「うああ、こっちに来る。」
同様に、キョウヘイ機も急上昇を行うのだが、ミサイルも垂直に空中を駆け上がった。
「キョウヘイっ。機体を降下させろっ!」
ソイルはキョウヘイ機の真後ろに付いていた。
指示通り急降下するムラサメ。
そして、その後を追おうとするミサイルを、ソイル機は主翼基部に配された機関砲で集中攻撃した。
 突如、空中で巻き起こる爆発。イージス艦の砲手はムラサメを迎撃できたと思ったであろう。
しかし、対空防御が疎かになっていたスキを付き、艦を爆撃する機体があった。

「まだ僕は死んでませんよ。」
キョウヘイである。彼は、的確に砲座を破壊していた。
「後はよろしくお願いします。」
間髪入れずに次の攻撃が始まる。
「あまいな。軍人とは、最後の最後まで油断せぬものだ。」
 ジュウシロウは、ソイルに追随して飛来し、そのままの勢いでMS形態に変形すると、ビーム・サーベルで艦橋を斜めに切りとった。
キイィッ、という鋭い音を立てて、鉄の塊が火花を散らし、切断面を滑り落ちていく。
「ヒューッ、ジュウシロウちゃん、やりますなあ。」
「ちゃん付けするな、さっさと片付けるぞ。」
ジュウシロウはソイルの言葉に付き合わずその場を離脱した。
「ジュウシロウさん、助かりました。」
「気にするな、お前は仲間だからな。」
 

それから数刻。装備していたミサイルをすべて打ちつくすと、ソイルが通信を入れた。
「よし、ここを離脱するぜ。」
「了解!」
ジュウシロウとキョウヘイも同意し、彼らはその場を後にした。

× × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

 破壊されたMSの屍が幾重にも折り重なるようにして地に伏している。
最早、我が軍とザフトのどちらのものかも判別がつかない。
半壊した建物に寄り掛かる者、ライフルを掲げて機能を停止した者など様々だ。
辺り一面から、もうもうと噴煙が上がり、その光景は2年前の激戦を思い起こさせる。
そんな情景の中、半壊したムラサメは四面楚歌の状態にあった。

「さて・・・・・最後までつき合ってもらうぜ。」
どうしてかは分からないが、こんな時にも笑みが毀れた。
(今俺がやるべきことは一機でも多くの敵を道連れにすることだ・・・・・)
懐事情もある。エネルギーも残り少なくなってきているのだ。大した時間は残されていないだろう。

―――――そんな時であった。
「んっ?・・・」
 不意にショウは空を見上げた。
そこに、MSの一団がこちらに向かってくるのが目に入った。
先頭には金色のMSが確認できる。その機体の装甲は、陽光に照らし出され眩く輝く。
「あれは・・・・・・?」
 実際、ショウは軍で使用している兵器については詳しい方だ。
しかし、あのようなMSは未だかつて見たことが無かった。
ただ、後に続くムラサメの存在が、かろうじて友軍機であることを理解させた。

 その機体は、迷うことなく前線に突入する。追随するムラサメもそれぞれ戦闘を開始した。
バビ二機が眼前に立ちふさがり、胸部ビーム砲を放つが、その刹那――――――
金色の機体は、自らの装甲でビームを受け止め跳ね返したのだ。
反射したビームに貫かれ、バビは爆散した。
(あの装甲は!?単なるビームコーティングではないな。あんな代物がまだ隠されていたとは・・・・・)
俺の目は釘付けになった。
「聞こえるか、お前達!オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハだ。今から私が指揮を執る。私に続けっ!」
 そのMSの搭乗者は、俺もよく知る人物であった。
(なるほど、代表のご帰還か。今更という感はあるがな。これで兵士の士気も上がるだろう。)
 俺は、どこかで勇気付けられているのに気が付いた。
しかし、そんな代表を目掛けて一機のMSが急速接近する。
例のザフトの新型機である。
自らの手でリョウスケの敵を取りたいとは思うが、何せこんな状況だ。それに、飛行能力をほぼ失ったムラサメでは攻撃の術はない。
UNKNOWN(デスティニー)は、高エネルギー長距離射程ビーム砲を展開すると、ビームを放った。
 しかし、金色のMSは、それをも装甲で受け止め跳ね返した。
そして、バックパックに2機装備した高エネルギー砲を前方に展開し、応戦した。

「おっと、こちらも気を抜けないな。」
付近には、ゾノ、アッシュを始めとするザフトのMSが複数存在し、なおも攻撃の手を緩めないでいた。
 ムラサメは四方八方に飛び退きながら、敵MS動力部を撃ちぬく。
最早手加減などしていられない。俺は、近寄る物体全てを容赦なく切り伏せた。
「邪魔だっ!!」
ビームアックスで打撃を与えようとするザクに向かって、サーベルを薙ぎ払う。
切断面をオレンジ色に発光させながら、泣き別れになった胴体が俺の視界を抜け、舞った。

 その頃には、刻まれたMSの墓標が俺の周りに散在していた。
俺は、構わず戦い続けた。
「消えろーっ!!」
串刺しにした機体を楯に、全快のホバリング。
格闘戦クローを閉じ開きしているゾノにそのまま押し当てた。
そしてサーベルを引き抜くと、バルカンで対象物を爆発させる。
二体分のエネルギーだ。爆発の衝撃で、破片が熱を帯びて流星の如く飛び散った。

どれほどの戦力が投入されているのだろうか?戦闘が終わる気配は全く無かった。
俺は、付近にあった建物の裏に身を潜めると、ビーム・ライフルで応戦した。
不利な状況とはいえ、一機ずつ確実に打ち抜いていく。
ふと、横目をやると数機の友軍機が確認できた。
が、次の瞬間――――
ビームの集中砲火を受け、握っていたライフルがその腕ごとスクラップとなって飛び散った。そして、機体は後方に退いたかと思うと期を置かずして爆散した。
(おいおい、あれが数分後の俺の姿というわけか・・・・・)
だが、俺の方に攻撃をしていた連中の砲撃が突然止んだ。
(しめた!)
俺はその間隙に突き、打って出ようとした。
しかし、それでも俺は思いとどまった。
(・・・・・・・・おかしい。何のためだ?)

そんなことを考えていた時であった。
「ちっ、いつの間に?」
前方にばかり気を取られていたであろうか、後方から飛来したグフに気が付かなかった。
相手は、これ好機とばかりにドラウプニル4連装ビーム・ガンを連射し、辺り一帯に光砲が降り注いだ。
「くっ!」
ビームはコンクリートの地面を打ち抜き、粉塵とその下の土壌が巻き上がった。
ムラサメはシールドを失っているためガードの仕様がない。だが、運良くビームは俺の機体を避けた。
 俺はすぐにライフルを相手に向ける。しかし、トリガーを引いてもビームが発射されることはなかった。
グフはシールドからレーザー対艦刀を抜き、今まさに振り被らんとする。
(ここまでか・・・・・)
本気で死を覚悟した。
しかし、ムラサメが両断されることはなかった。
背後から一筋の光がグフを貫いたのだ。


「何っ!?」
俺は彼らの存在をすっかり忘れていたのだ。彼らとは――――――
「隊長ぉ~、水臭いですぜ。」
聞きなれた声がコクピットに木霊する。
「微力ながら援護させて頂きます、隊長。」
「グフの近接戦闘用主力武装、テンペスト・レーザー対艦刀。厄介な武器ですよね、隊長。」
カメラアイを上部に向けると、僚機が旋回しているのが映し出された。
「お前ら・・・・・」
俺は、なんとも表現しがたい気持ちでいっぱいになった。
「さて、最後の仕事だ。敵MSを殲滅するぞ!」
「了解!!」
3者の声が共鳴した。
(またしても死に場所に恵まれなかったか・・・・・ 俺はつくづく悪運の強い人間らしい・・・)
だが、せっかく拾った命である。俺はリョウスケが救ってくれたと考えることにした。

× × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × ×

この後、デスティニーと交戦していたアカツキは左腕を損傷するが、キラ・ヤマト駆るストライクフリーダムの介入により危機を脱する。また、時を同じくして降下してきたクライン派の黒いMS、ドムトルーパーの助力もあり、オーブ軍は徐々に勢いを盛り返す。そして、レドニル・キサカを伴いオーブ中枢部へと進んだカガリは、ジブリールの行方をユウナに詰問する。しかし、そこにはジブリールの姿は無かった。また、国家反逆罪により拘束されたユウナは、脱走を図るが、落下してきたグフ・イグナイテッドに押しつぶされ無残な最後を遂げる。
海上で対峙する戦艦ミネルバとアークエンジェル。そして、デスティニーに加え、レイの駆るレジェンドの参戦により劣勢を強いられるフリーダム。ラクス・クラインの口添えもあり、アスラン・ザラは怪我を押して新型機インフィニット・ジャスティスで出撃し、デスティニーを圧倒する。
互いに一歩も譲らない攻防戦。しかし、突如として戦闘は終了する。ロード・ジブリールがシャトルで逃亡を図ったのである。インパルスを発進させ、ジブリールを負うルナマリア・ホークであったが、今一歩のところで逃してしまう。地上における主要な本拠地を失ったブルーコスモスの盟主は、連合軍宇宙基地ダイダロスにおいて最後の抗戦に出ようとしていた・・・・・

× × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

仲間の助けもあり、かろうじてドックに帰還した俺は、これまでの経緯を説明した。
「リョウスケは・・・・・戦死した。ザフトの新型にやられたんだ。その場に居合わせながら俺はアイツがやられるのを見ているだけしかできなかった・・・・」
暫くの間、誰も口を開こうとはしなかった。
一旦は落ち着いたはずの気持ちが、またぶり返す。
さらに、沈黙の時が余計に俺を苦しめた。
重さなどないはずの空気が俺の肩に重くのしかかっているように思えた。

「・・・・・隊長の責任ではないと思います。彼も軍人です。覚悟はあるはずです。」
最初に口を開いたのはジュウシロウであった。
「覚悟か・・・・」
(本当にそうなのか?アイツだって生きたいだろう?)
悔しさがこみ上げてきた。
俺は、垂直にそびえるドックの壁に拳をぶつけた。
「アイツは俺のために死んだんだ!勝ち目が無いことは明白だった。それなのに俺は止められなかった・・・・」
何度打ち付けても俺の気が晴れることは無かった。俺の拳には血が滲んでいた。
「やめろっ!!」 
ダンが俺の手を掴んだ。
「お前1人のせいじゃねぇ!それより、そんな言い方するとアイツが無駄死にしたみたいじゃねえか。」
「ダン・・・・」
「アイツも1人の戦士だ。自分の意志で決めたことだ。それが、どんな結果を成そうとな。」
「しかし・・・・・」
俺はうまく言葉を紡げないでいた。
「まあ、お前さんの気持ちも分かる。確かに、隊長としての責任はある。」
そう言うと、ダンは一旦言葉を切った。
「しかしだな、戦争ってもんは先が読めねえ。シナリオ通りに行くとはかぎらねえだろ?」
ダンは、そこに集う者全てに確かめるように語った。
「そうだぜ、隊長。俺もあんたを責めようなんざ思ってませんよ。」
「僕もです。隊長がご存命なことこそうれしいですよ。また軍事兵器討論ができますしね。」
「右に同じです。彼も軍人としての誇りをもって戦ったのです。賞賛に値します。」
「お前ら・・・・・・」
笑顔でそう述べる仲間に対し、俺は感謝した。
「いい部下をもったな、マツカゼ。」
ダンが俺の肩をポンポンと叩いた。
「ええ、まったくです。」

俺は、ドックに並んだムラサメを見上げた。ちょうど目前にあった俺の機体は、全身が黒い煤で覆われ、所々に陥没した箇所が見受けられた。
そして一際目を引くのは、切り取られた左腕と左翼であった。これらのキズは激戦を意味していた。また、消灯しているツインカメラからは、やや寂しさが感じられる。
(まったく、こんな状態でよく戦ったものだ・・・・・)
改めて機体を見ると、しみじみと感じる。
「さて、大健闘してくれた愛機を整備してやるかな。」
俺は、皆と共に作業に入った。

× × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × ×

俺は、地上へと伸びる階段をコツコツと音を立て上っていた。
重い扉をゆっくりと開いた。
「くっ・・・・」
俺は手を額に翳(かざ)した。
今まで地下にいた分、日差しが眩しかった。
ちょうど、小高い丘に出る。そこには一面に緑が広がっていた。
ここは俺のお気に入りの場所だ。
視線の先には、青々とした高木が聳(そび)え立っていた。
あれほど壮絶な戦闘が繰り広げられたことさえ忘れさせるほど、静寂な光景であった。
本当に、何事も無かったかのように・・・・・・・

× × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

心地よいそよ風が頬を撫でる。
風が通り抜ける中、草花がざわざわと揺れた。
俺は、空を仰いだ。
「何も変わらないな、空は・・・・・」
自然にそんな言葉が漏れる。


だが、視界の下端には別世界がちらつく。
(俺達は国を守った。しかし、失ったものが計り知れないのも事実だ。)
俺はそちらを一瞥すると、再び視線を戻した。
再び風が凪いだ。
海から陸へと駆け上る海陸風。
先ほどよりも幾分強い風であった。
「リョウスケ・・・・見えるか?お前にも。この青い空が・・・・・・・」
そこには、いつもと変わらない、どこまでも続く群青の空が広がっていた・・・・・・・・・

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

6話に渡ってお送りしてきた、オーブ攻防戦編はこれにて終了します。次回は、ムラサメの開発秘話とある事件について書きたいと思います。


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